三月は深き紅の淵を 恩田陸

三月は深き紅の淵を (講談社文庫)

4部作になってる入れ子小説。らしいんだけど、コレ、入れ子になってるかな?
どうも入れ子になってないような気がするのです。たとえて言えば、ある大きさの箱より一回り小さい箱を探してきた来たけど、大きさをあわせてみたら同じ大きさだった、みたいな不快感*1。最終的に複線が回収されきってないからかなぁ。一章は「どこにあるか判らない」、二章は「誰が書いたかわからない」、三章は「書かれる前の話」で第四章は「書いてる途中の話」なんだけど「本のタイトル」以外の共通項が少ない。ある章で回収されなかった複線が他の章で回収されるか、と言えばそうでもない。なんか読者に解釈を投げすぎな感じがします。そういう持ち味の作家なんでしょうか。

個々のエピソードは完結してるし、抜群に面白いです。ミステリーとしてはやや幼稚な感じだけど、短編としてならば全く遜色ないので凄く残念。これなら寧ろ短編集とした方が良かったかもしれないです。

前の「Q&A」もそうだけど、アイデアは面白いんですがこなしきれてない感じがします。大変惜しいです。

*1:判りにくい例えだな。