ローマ人の物語 ―悪名高き皇帝たち― 塩野七生

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ローマ人の物語、今回分読了。

悪名高き、というサブタイトルの割には塩野七生がローマ寄りであることを差し引いても普通でした。
悪魔の化身のように言われるネロも、中国の皇帝たちに比べれば大したことはしていないですね。
言動に安定性を欠くものの、悪名高き…と言うほどではないかな、と。
ネロの場合は現在の世界の1/3がキリスト教社会なので必要以上に悪く伝わってる感じです。
まぁ、ローマの大火の責任を故もなく背負わされて処刑されたキリスト教信者には同情しますが。


ティベリウスクラウディウスに至っては為政者としては至極まとも。


緊縮財政にせざるを得なかったティベリウス
市民の娯楽は政府が提供していた当時ローマ市民には受けが悪かった。
増税もせず、国債も発行せず、国の財政を立て直すなんて言うのは尋常ではない労力で
日本政府も見習え、と言いたいくらい。
元老院や民衆に期待していた協力が得られない、と判ってカプリに隠遁したのもむべなるかな。
カプリ隠遁後も皇帝としての仕事はこなしたので
ローマをないがしろにしている、と逆に元老院や民衆から反感を買ってしまったのは
皇帝と民衆、元老院が見事にすれ違っていて面白い。
自分この立場だったらそんなのイヤすぎる。


クラウディウスは小心者ではあったけれども
今回触れられたユリウス・クラウディウス朝の皇帝の中では最も有能だったのではないでしょうか。
ティベリウスは偉大な「神君」アウグストゥヌスの影響から抜け出すのは時代的に不可能だったため
政治にしろ軍事にしろ改革をする、なんてのは頭になかったのだろうけど。
ただ、彼は女運が悪かった。いや、可哀相なくらいに。
はじめにに結婚をする予定だった女性とは破談に、次に結婚する予定だった女性は結婚式当日に死亡。
3番目のメッサリーナは自制心が全く無いタイプ。
イタリアに行く事があったら女性に向かって「メッサリーナのようだ」と言ってみると
どんな風に伝わっているかわかります。多分殴られます。
塩野氏の「そうは言っても自制心のある女性を女らしいとは言わないのが、世の男共ではあるのだけれど。」
は当を得ていて面白いです。
えぇ、きっとそういうのは「可愛げが無い」と言うと思います。
で、クラウディウスは4番目妻、ネロの母アグリッピーナに毒殺されたようです。


ローマ皇帝になんてカエサルやアウグストゥヌスみたいな非凡な人間ならともかく
普通の人間が勢いでなるもんじゃぁないよなぁ…
末路がイヤすぎます。