皇国の守護者 佐藤大輔 伊藤悠

皇国の守護者 1 (ヤングジャンプコミックス)

”まとも”にやらない相手だったら?
                 ―新城直衛―

同名ノベルズの漫画化。


大国「帝国」が東の小国「皇国」に侵略を開始した。
前線に予備兵として配備された実戦経験と勘のある
新城中尉は味方の作戦に不安を覚えつつも従軍する。
嫌な予感が的中し緒戦に完敗、撤退を余儀なくされる皇国軍。
損害の少ない新城中尉の在籍する大隊が殿を務める撤退戦が開始された。


久々の戦記物。原作付きだけあって土台がしっかりしてて面白いです。
長らく平和の中にあった軍隊において無能な上司(一部有能)と
有能な部下、というのはやや使い古された設定ですが
この話の中では上司や組織に対する抵抗、と言った要素はありません。
なるべく損害を抑え、撤退戦を遂行することのみを目的として
そのために切り捨てられるものは切り捨てます。
「あの人は正しくないぜ。
 だが、俺たち生きて帰れるかもしれんぞ。」
という呟きは当を得ている。


対する帝国軍総司令ユーリアも大軍の運用に長けた有能な司令官*1
ここに女性を持ってくる辺りセンスを感じます。


皇国側に反撃の糸口は未だありませんが
どうやって反撃を企てて行くのか、興味深い所。
上位仕官が軒並み死んで、新城はやたら早い速度で昇進し
軍の実権を握るとかいう
ヤン・ウェンリー真っ青な事になって欲しいような、欲しくないような。


原作は存在は知ってたものの読んだことはありません。
今度読んでみよう。

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*1:全く蛇足だが、帝国が緒戦で用いた戦術はナポレオンが得意としたもの。砲による長距離攻撃で敵軍を浮き足立たせ、散兵が混乱を誘う。陣形が崩れたところへ騎兵の突入。歩兵の横列陣で迎え撃つ皇国軍は一点突破の前になす術がなかった。皇国軍側が包囲戦に持っていけないあたりが司令官の能力の差かな。