死刑囚042 小手川ゆあ

死刑囚042 5 (ヤングジャンプコミックス)

死刑制度の是非をめぐって行われた
死刑囚の脳に興奮すると爆発する特殊なチップを埋め込み
監視下で奉仕労働をさせ「人の心」を取り戻せるか否かを試した実験を描く
フィクション*1です。


死刑囚042号(田島)とまわりの人間の関わりや葛藤を上手く描いています。
初めは感情を表に出さなかった田島が徐々に人間的な感情を表していく様は
ひとつの成長ドラマです。
この実験に関わる人間が田島を支えるやり方、避けるやり方、外部の誹謗中傷
などの書き方が上手く「人は社会が育てる」、というのを実感できます。


読後感は「プラネテス」に近いかも。
プラネテスが宇宙開発を通じて
人と人との関わりを恥ずかしいくらいに正面から謳いあげたものであるならば
これは人の関わりの中に生まれる倫理を声高に叫びます。
こういった作品は少年誌では出来ないな、と。


小手川ゆあは大分前に「Anne・Freaks」は読んだものの
なんというかイマイチでこんなに化けるとは正直思って無かったです。
次回作が楽しみな作家さんです。


死刑囚042は今回出た5巻で最終巻になり
オチとしては、やっぱり的なものがありますが
(そうは言っても他の落としどころはあまりない)
この作品はオチ云々で評価が決まるものではありません。
濃厚なヒューマンドラマが好きな方は是非。

*1:漫画の紹介をするときに「フィクションです」と書くのは、漫画はほとんどの場合がフィクションでまれにノンフィクションである、という事実を鑑みればバカらしい気もしますが、実際にありえるかもしれないシチュエーションなので念のため。